大 企 業 病
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清水 悟
企業の落し穴は自社製品(商品)やサービスに過度の自信を持つことだ。自信が過剰に
なると過信となる。これが嵩じると慢心・驕心・倣慢と心が高ぶって結果は企業の衰退で
ある。これを大企業病という。
昨今の不祥事を考えてみたい。まずシャープ。多頭政治の弊害である。歴代社長が会長
や相談役、顧問になって部屋や車を持ち、それぞれに影響力を行使する。船頭多くして船
山に登る。一人の愚将は二人の名将に勝る。の言葉の如く誰が経営トップか分からない。
カネボウの化粧品事故、企業の対応の遅さに尽きる。結果的に被害を拡大させた。ユー
ザーからの情報が軽視され、逆にユーザーへの危機情報の提供が十分でなかった。商品へ
の過信、事なかれ主義の蔓延、ぬるま湯体質、合併企業にありがちな売上げ至上主義など
に原因がある。
結果としてカネボウの事業縮小が親会社の花王主導で行なわれることになり、遅くとも
16年末までにカネボウの研究部門、生産部門のすべてが花王に統合される。
JR北海道、鉄道事業者のイロハである利用者に対する安心・安全な運行へのかけらも
ない。杜撰な保守管理、脱線を引き起こすレールの異常の大量放置、怠慢、組合同士の確
執による連絡の不徹底。すべて独占企業の傲りである。
特にレール幅点検数値の改ざんは管内の部署に及び、国交省の特別保安監査でも見抜け
なかったことは重大だ。このような会社に15年に開業する北海道新幹線を任せることに
一抹の不安がよぎる。
最後はみずほ銀行による反社会的勢力への融資。根強い縦割意識、派閥バランス人事、
旧3行のたすき掛け人事が経営判断を遅らせた一因だろう。それぞれに良きにつけ悪しき
につけ企業風土がある。それにしても暴力団員への融資は、みずほに限らず三菱、住友グ
ループをはじめ生保や信販でも判明した。情報の相互利用と経営幹部の矜持が望まれてい
る。 (2014.01)