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(2011.11.16)

山崎義雄

深刻な“政治災害”

 国民はいま、自然災害ならぬ深刻な政治災害≠ノ遭っている。この5年間で6人の
理大臣が交代。期待された野田のドジョウ総理も動きがにぶい。焦眉の急である災害復旧
対策の遅れ、TPP参加問題のもたつきなど、枚挙にいとまがない。
 TPP参加問題では、やっと、“交渉参加”の表明にこぎ着けたが、野田総理の腰が引け
た感はぬぐえない。反対派への説得は少しも進んでいない。反対派の反撃はこれからだ。
 反対派は、農業、医療などでアメリカにしてやられるという危機感を宣伝する。という
ことは、反対派や反対する政治家自身も日本政府の交渉力、外交力を信じていないという
ことではないか。
 これでTPPの交渉のテーブルに着くことを忌避するというのでは、世界的な貿易自由化
の波に乗り遅れ、結果的には先行き、日本の貿易は日本が参加せずに決められた国際ルー
ルに縛られることになろう。
 問題は視点の長短にある。参加賛成派は10年先を見ているが、反対派は目先の危機、不
利益を重視している。ありていにいえば反対派の政治家は農業や医療や、選挙民の反発を
恐れているのが本音だろう。
 反対派の正義はTPPついて国民に対する国側の説明が十分になされていない、国民の理
解が得られていないというところにあり、だから反対だ、あるいは時期尚早だという主張
になる。
 しかし、誤解を恐れずいえば、国民一人ひとりが、自分を含めて家族や親戚、知人、友
人の顔を思い浮かべてみた時に、この一人ずつにTPPを説明して納得を得る必要があるの
かどうか考えてみたらいたい。そこまでやる必要があるとは思えない。結局、国民への説
明も程度問題で、それを主張しすぎるというのは政治家自身が政治責任や政治決断を回避
することにもつながり、責任放棄になりかねない。
 残念ながら、国民の目には今の政治家が素人っぽく見える。いってみれば国民だけでは
なく政治家自身がそれを認め、政治家自身にも政治不信が根付きはじめているのが昨今の
政界ではないか。
 政治の場において、国民のコンセンサスを得るという正論を実践しようとすれば、あら
ゆる物事の決着は時期を失し、前進や改革に縁遠い平均的な結論しか出ないだろう。国民
に代わって議論するのが代議士であることを忘れないでもらいたい。

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